磁気刺激治療(TMS)の概要
磁気刺激治療とは、うつに対する新しい治療方法です。
医療先進国のアメリカ発の治療方法で、アメリカ食品医薬品局(FDA)から、2008年に認可を得ています。
磁気を用いて脳の特定の部位に働きかけ、脳血流を増加させることによって低下した機能を元に戻していきます。
薬物治療や電気けいれん療法(ECT)に比べ、副作用が少なく安全性が高いのが特長です。
2012年にNHKで特集番組で放送され、日本国内でも一気に注目が高まりました。
うつ磁気刺激治療 (TMS)のポイント
- 薬物療法などの、従来の治療とは全く異なる画期的な療法
- 副作用がほとんどない
- うつ病は脳の機能低下によって起こるため、そのメカニズムに基づいた治療法
このような方におすすめの治療です
- うつがなかなか治らない。数年〜数十年悩まされている。
- 向精神薬を服用することに抵抗感がある。
- 薬の副作用がつらい。
- 電気けいれん療法(m-ECT)が怖い、副作用がつらい。
- 副作用の少ない治療がよい。
- 薬や他の治療が効かない、あるいは効果が不十分。
なぜ磁気刺激治療(TMS)がうつに効果的なのか
以前は心の病と考えられていたうつ病も、最近の脳科学研究の進展により「脳の疾患である」という考えが主流です。
うつの症状を発症している脳は、血流や代謝が低下している可能性があります。
正常な脳は黄色(=活性化している)部分が多く見られ、活発に働いています。一方、うつ病を発症している脳は青(=活動が低下している)部分が多く、活発に働いていないことがよくわかります。
脳の血流や代謝の低下が、うつ病に関係している可能性は大いにあると言えるでしょう。
TMSうつ病治療は磁気刺激を利用して、機能低下した脳の回復を行い、うつ症状の寛解を目指します。
磁気刺激治療(TMS)のメカニズム
背外側前頭前野のはたらき
- ① 判断、意欲、興味をつかさどる
- 機能が低下すると、やる気がなくなる。
- ② 扁桃体のバランスを整える
- 扁桃体は、不安、悲しみ、自己嫌悪、恐怖などの感情をつかさどる。機能が低下すると、これらの感情が強く出てしまいます。
脳の左側の背外側前頭前野の活動が低下し、逆に扁桃体が過剰に活発に反応する状態を、うつ病のメカニズムと考えています。
背外側前頭前野を磁気刺激します
左側の背外側前頭前野を磁気刺激で活性化させ、意欲や思考力を正常に機能させ、二次的に扁桃体の過剰な活動を抑制させるのが、磁気刺激治療(TMS)の治療方法です。
磁気刺激治療(TMS)の効果
磁気刺激治療は、世界中で行われている多くの臨床研究により、効果が証明されています。
CGI:臨床上の医師の印象による重症度と全般改善度の医師が評価判定。7段階で判定。
PHQ-9:うつ病に関わる9つの項目から抑うつの度合いを測定するための質問紙法。
過去2週間の症状について4段階で回答。
磁気刺激治療(TMS)の安全性
薬物治療のような大きな副作用はほとんどありません。
個人差はありますが、磁気による頭部への軽い痛みや不快感があります。
磁気を利用した治療のため頭に金属が入っている方、ペースメーカーやインプラントを使用している方、てんかんの既往歴のある方は治療が受けられません。
磁気刺激治療(TMS)の流れ
まずは医師がTMSによる治療が適切か診察いたします。
TMSの治療が適切とされる方は、1日1回40分ほどの治療を40回程度継続して行います。
※回数、期間などは個人差があり、医師にご相談ください。
健康保険は適用外のため、保険証はご利用いただけません。
治療費用は1回につき 20,000円(税込)です。
(出典)一般社団法人 日本メンタルヘルス研究センター